近頃、特に先進国の若い人たちを中心に「FIRE movement」が大きな広がりを見せている。
FIREとは、"Financial Independence, Retire Early"(経済的自立と早期退職)の頭文字。若いうちに資産を築き、その資産から生み出される収入だけで生活費をまかなうことで、働かずに自由な生き方をするのが基本的な考え方だ。
日本でも、わたしが投資を始めた2019年頃からこの言葉が徐々に聞かれるようになってきた。
それから5年ほどたち、日本でも実践者が増えたことで、今では多くの人が書籍やブログ、YouTubeなどでそのノウハウや暮らしぶりを発信してくれている。
わたし自身、FIREや資産形成、お金についての考え方を学ぶために、おそらく30冊以上の関連書籍を読んできた。今回はその中からおすすめのものを(わたしの独断と情熱を持って)紹介したい。
FIREを目指している人だけでなく、「資産形成やってみようかな?」「NISAってなんだろうな?」と思い始めている初心者から、すでに投資を始めている人に役立つものも含めたので、ぜひ参考にしてほしい。
FIREを目指す人におすすめの本5選
1) 『改訂版 お金は寝かせて増やしなさい』水瀬ケンイチ
著者はサラリーマンをしながら20年インデックス投資を実践し、すでに1億円以上の資産を築いている。
日本の投資初心者にわかりやすいよう、投資の基礎知識と、日本での実践方法、新NISA、iDeCoなどの税制優遇の活用法を丁寧に説明してくれる良書。
タイトルのとおり、「お金は寝かせて増やせ」ということで、インデックス投資による「ほったらかし運用」を推奨している。ドルコスト平均法で長期分散投資を行うことは、過去のデータからも最も運用成績が優れているうえ、特に投資初心者にとっては精神的な負担も少なく続けやすいことが大きなメリットだ。
わたしが投資を始めたときに読んだのは、改訂前の版のもの。
この本を片手に、ノートに資産配分のシミュレーションをメモしながら、何に投資するかを決めていった。わたしにとって最初の投資指南書といえる。
改訂版では、2024年に始まった新NISAについての情報なども更新されている。
また、著者本人の資産の増減や、暴落時に考えていたことなども共有してくれているので、特に不安が大きい投資初心者にとっては、投資に対する心構えを学ぶのにも役立つ。これを読んでいたおかげで、わたしも暴落時に動揺して売ってしまったりせず、順調に資産を積み上げることができた。
投資初心者、NISAやiDeCoに興味があるけどよくわからないという人におすすめ。
2)『本気でFIREをめざす人のための資産形成入門 30歳でセミリタイアした私の高配当・増配株投資法』穂高唯希
著者は新卒で就職してすぐにリタイアを目指し、30歳でセミリタイアを達成した日本国内のFIRE先駆者。
米国高配当の個別株や高配当ETFなどを中心に資産を形成し、7年半という短期間でFIREを実現した事例だ。
著者は高年収サラリーマンであったため、「自分にはあてはまらないのでは…」と思うかもしれない。しかし、毎月手取りの8割(!)を投資に回し続けた著者の、「支出の最適化」の考え方は誰にでも応用できる。「節約=我慢」ではなく、「自分の価値観や夢・目標に照らし合わせて、金銭に関わる経済行動を適切に取捨選択する」ことだという言葉が印象深い。
わたしの場合はインデックス投資が主軸なので、本書で紹介されている高配当株投資を実践しているわけではない。ただ、FIREを目指す過程では「高配当株投資」という言葉は必ずと言っていいほど見聞きする。最初の段階で学んだうえで、自分に合ったスタイルを選択しておいたほうが、後から後悔したり惑わされたりしなくて済むのでよいと思う。高配当株投資はリターンの最大化という点ではインデックス投資に劣るものの、安定的な配当がもたらす安心感は大きいと感じる。わたしも一部取り入れることも検討中だ。
これからFIREを目指したい人、高配当株投資に興味がある人、支出を抑える方法を知りたい人におすすめ。
3)『FIRE 最強の早期リタイア術――最速でお金から自由になれる究極メソッド』クリスティー・シェン、ブライス・リャン
31歳でFIREを達成し、中国系カナダ人としてFIREムーブメントを牽引してきた著者の資産形成と、FIRE後の生活のための技術が凝縮された一冊。
幼少期は中国の貧困地域で育ち、カナダへ移住してからどのようにミリオネアに到達したのかが、半自伝的に描かれている。欧米の事例ではあるものの、倹約を重視した慎重なマインドセットや資産形成の手法は再現性が高いと感じる。
著者自身の成功例だけでなく、子どもがいる人にも適用できる方法や、よりハードルの低いサイドFIREなど、複数のFIRE実践者への取材が盛り込まれている点が魅力だ。
著者のポートフォリオは株式(インデックス)と債券を6:4で保有しており、外国債券を取り入れる場合は為替リスクが懸念される。しかし日本在住者であれば、債券部分を現金として確保するなどのアレンジで対応できるだろう。
さらに、FIRE後の生活をいかに安定させるかにも焦点が当てられている。旅をしながら暮らすことで生活費をむしろ抑える「地理的アービトラージ」という考え方は、海外移住やノマドライフに興味がある人には特に新鮮に映るはずだ。
「自分にはFIREなんて無理なんじゃ⋯」と不安を抱える人や、FIRE後の人生設計を具体的に考えたい人におすすめしたい一冊である。
4)『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』モーガン・ハウセル
こちらはお金にまつわるさまざまな人間心理を、20のテーマで分析している世界的ベストセラー。
本書で最も納得させられたのは、第9章の「本当の富は見えない」という主張だ。たとえば、高級車やブランド時計などにお金を費やしている人は、必ずしも裕福ではない。目に見えるモノにお金を浪費すれば、そのぶん富は失われているからだ。だから、本当に裕福な人は見た目では区別がつかない。
当たり前なんだけど、言われてはじめて「ほんまそれな⋯」となった。
「収入ーエゴ=貯蓄」と著者が示すように、最低限自分が快適だと感じる以上の支出は、じつのところ他人のために費やしているということだ。
わたしも、収入が上がった当初は生活レベルを上げてしまい、貯蓄率は上がらなかった。振り返ると「誰に見せるためだったのだろう」と思う出費も少なくない。大量の服とか⋯⋯。
今回紹介した他の書籍と同様、著者もインデックス投資の優位性を一定の根拠とともに示してはいる。それでも「誰にとっても最適な投資など存在しない」というのが結論で、それよりも「自分が夜に安心して眠れる投資方法を選ぶこと」が最も大切だと語っている。
投資はリスクが不安で手を出せていないという人や、貯蓄がうまくできずに悩んでいる人にはぜひ読んでほしい。人生を自分にとって有意義なものにするための資産形成のヒントがつまっていると思う。
5)『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』ニック・マジューリ
このラインナップの中では出版年がもっとも新しく、今年に入ってから読んだ本。
タイトルのとおり、富を築くためにはいつ何時でも「Just Keep Buying(ただ買い続ける)」ことが重要だという、インデックス投資の基本を説いている。
この結論だけを聞くと、「他の多くのインデックス投資本と同じことを言っているだけでは?」と思うかもしれない。
しかしこの本の特筆すべき点は、データサイエンティストである著者が示す数多くの歴史的なデータだ。暴落時に狼狽したり、ポートフォリオのリスク配分をどうすべきか迷ったりなど、投資家は感情に左右されやすい。しかし著者の示してくれるデータのおかげで、なぜ「ただ買い続ける」ことが重要なのかが合理的に理解できる。
すでにインデックス投資を実践している人にとっては、自分の運用方針に自信を持つ根拠になるし、これから始める人にとっても投資への心構えやリスク配分を学ぶ助けになると思う。
最も印象的だったのは、コロナショックで株価が暴落していた時期のエピソード。
著者が食料品を買いに出かけると、普段と変わらぬ様子でスーパーの入口で花を売っている人がいた。それを見て著者は、「こんな状況でも花を売ろうとする人がいるなら、世界はまだまだ大丈夫」と考え、株価は持ち直すと確信したそうだ。
人類の営みが続く限り、経済は良くなっていくだろう、という希望の持てる話だった。
まとめ
まずはNISAやiDeCoなどを活用して、小さくでも投資を始めたい、あるいはいちから丁寧に学びたいという人は、1) の『改訂版 お金は寝かせて増やしなさい』を手に取ってみるのがオススメ。
そのうえで、投資を実践しつつ他の書籍も読み進めれば、自分の進む道を再確認できたり、自信を深めたりするきっかけになるはずだ。
投資はやっぱりやってみないことには何もわからないですからね。
今回紹介した5冊すべてに通底している重要なポイントは、以下の3点。
- 長期的な視点で運用すること
- リスクの分散を意識すること
- どんな局面でも投資を継続すること
もっとも、どの書籍にもそれぞれ学ぶべき新しい視点や気づきがある。わたし自身、昔に読んだ本をあらためて開いてみると、以前は見落としていた箇所にハイライトを引く場面が何度もあった。もしどれか一冊だけでも気になったなら、ぜひ読んでみてほしい。少しでもFIREの実現に近づく助けとなれば幸いだ。
ーFIREまであと357日。




